Film Craft and Art

さまざまな映像表現を巡った末にたどり着いたのは、映像を「工芸」としてつくることでした。漆が幾重もの塗りによって深い光を宿し、織物が一本一本の糸から風景を立ち上げ、陶土が人の手と火を経て器になるように、映像もまた、描き、撮り、切り、重ね、動かすという手仕事の蓄積から生まれます。私が目指すのは、アートとエンターテインメントの境界にあり、楽しさの奥に静謐さをたたえ、長い年月を経てもなお眺め続けられる作品です。光と時間を素材とし、ディスプレイやスマートフォンの画面を、現代の暮らしに置かれる一つの「器」として捉える。日本の工芸に息づく、素材への敬意、細部への眼差し、余白の美を映像へと受け継ぐ試みを、ここでは「Film Craft and Art」と呼んでいます。

Dappled Light Suite#1

Installation Art | 6min x 12 displays + 12 Speakers

Exhibition at Tauchung Art Museum Taichung,Taiwan 2025

私はこれまで、国や文化、時代や仕事の枠を越えて、多くの人と一緒にものづくりをしてきました。けれども、今ほど大きな変化を強く感じたことはありません。テクノロジーの波は、時に厳しい挑戦をもたらしますが、同時に新しい可能性への扉も開いてくれます。新しい美術館のオープニングに作品を展示するにあたり、大切なのは、未来を生きる子どもたちの目を見つめることだと思いました。大人たちの中でテクノロジーを利用して「これくらいでいい」と妥協する空気が広がる中でも、子どもたちの目はまだ澄んでいて、広い想像の世界を映しています。だからこそ、考える力を育み、芸術の火を絶やさないことが、私たち大人の役割です。人の創造力は、この不安定な時代を導く灯りであり、未来への橋をかける力なのです。自分の感覚と手でつくることをやめない。その姿を子どもたちに見せるとき、彼らの手に託される未来はただの明日ではなく、希望にあふれた新しい地平になります。

この作品の名「Dappled Light Suite」は、木漏れ日が生み出す旋律のように、自然からインスピレーションを受け取り、自分の創造をふくらませていくことを表しています。
木漏れ日の光に耳をすませるように、子どもたちが自らの未来を豊かに育んでいけることを願っています。この美術館がいつも笑い声で溢れていますように。

KARMEN

Installation Art | 5min x 5 Wall Screen + 5 Speakers

Exhibition at Pier 2 Kaohsiung,Taiwan 2023

台湾高雄の鉄の職人と機械がオペラの名曲「Carmen」を奏でる。 誇りを込めたそのタイトルは「Karmen」。立ち込める火花と煙、油の匂い、轟音と静寂、同時に最新技術による先端のものづくり、人間のパワーと共に見事な調和の世界を表現した。 実際に現場に足を運び、900カットに及ぶ高雄にある鉄の現場を収録し、完成させた映像インスタレーションアート。 高雄が歩んだ歴史を学び、今もなお鉄と向き合う現場に漂っているスピリットを映像に込めました。現場の音だけを使用して楽曲を作り上げました。港町である高雄市にある展示会場のPier2にはそのところどころに激しい歴史を感じさせる痕跡が残り、今ではアートを通して人々が豊かな気持ちになる場所へ姿を変えました。様々な国から集まったアーティスト達と一緒に高雄を表現した貴重な時間でした。

Xylophone | 森の木琴

Brand Film | 2011

この映像が完成したのが2011年3月10日。日本ではその翌日に震災が起きました。公開して間もなく世界中から注目を集め、カンヌライオンズで三部門で受賞するなど思いもよらない高い評価を受けた作品。森の窮状の環境問題を訴える内容で、44メートルの手作りの木琴がバッハのカンタータ147番を奏で、林業が止まり、やせ細りながらも美しく見える森の情景とともに表現した。Youtubeではすでに1000万ビューを超えるアクセスを記録して、いまだに伸び続けている。この作品は国内外で20を超える賞を受賞するに至りました。

Dousuru-Ieyasu | どうする家康

Title Art | Opening Sequence of TV Drama | 2023

安土桃山から江戸初期にかけて花開いた工芸と美術の息吹を、作品の底流に据えました。武士たちの誇りと競いが、金工や茶陶、絵画や仏像に宿り、やがて文化そのものとなった時代。茶の湯が精神を磨き、狩野派の筆が風俗を描き、仏像の眉間に静けさが宿る。
この映像にも、その精神のかけらを宿しています。抽象の中に、石のような家臣の気配、太陽のような家康や瀬名の面影を忍ばせ、線と円のあわいに、人の心が投影される余白を描いています。

“DOBOLERO” in DOBOKU Civil Engineering Exhibition | 土木展

Installation Art | 5min x 3 Wall Screen + 2 Speakers

Exhibition at 21_21 deign sight Tokyo,Japan | 2016

21_21 Design Sightで開催された展覧会「土木展」では会場の映像作品を出品した。土木工事の現場の映像をドキュメンタリーで撮影し、その映像の音のみを使ってラヴェルの名曲「ボレロ」を構成し、映像とリミックスして制作。会場のエントランスに3面の壁面に投影した。

Guardian of the Spirit (Moribito) | 精霊の守り人

TV Drama Title | 2016

上橋菜穂子氏原作によるファンタジー小説のドラマ化にあたり、そのタイトルバックを手がけた。ベースとなる背景をアイスランドにて空撮、ハイスピード撮影などを駆使して撮影。タイトルバックオリジナルのキャストの撮影を東京のスタジオで行い、3DCGなどを織り交ぜてファンタジー世界のイントロダクションにふさわしい映像美を心がけた。佐藤直樹氏作曲、NHK交響楽団によるテーマ曲もそのスケール感の表現に欠かせないものとなった。ドラマは2016年から3年に渡り放映される。ファンタジーの世界観というものが空想のものであり、その創作の独創性が試される貴重な機会になった。

Clouds above the Hill | 坂の上の雲

TV Drama Title Art & Cold Open | 2009

司馬遼太郎原作のこの作品を映像化する。そのことだけで何ヶ月も悩みました。作品としてあまりにも著名で、壮大で、名作。武者震いのような、緊張のような気持ちでした。2006年から考え始めたタイトルバックを、オンエアが始まった2009年まで3年間考え続け、そしてオンエアが終わる2011年末までのまる5年間この作品と向き合いました。タイトルバックの表現で最終的に決断したのは「山」。そびえる山を登る。その道筋を主観映像で見せるというものだ。一時の話題性でこの映像を描いてはならない。10年後、20年後、それ以降もこの作品に恥じないエンディングを飾るものでなくてはならない。久石譲氏の静謐なテーマ曲とともに作品の後味を清々しいものにできたように自負しています。

Yae no Sakura | 八重の桜

Title Art | Opening Sequence of TV Drama | 2013

未曾有の震災を契機に生まれたドラマ。その舞台・会津若松には、幾度もの挫折と再生の歴史が刻まれていた。東北を歩き、現実の痛みと向き合いながら制作したタイトルバックは、物語だけでなく、いま起こる現実を映す覚悟を要した。再生を描くはずが、いつしか創り手のほうが励まされていた。坂本龍一氏とNHK交響楽団による録音、300人の子どもたちとの撮影で流した涙は、希望の音色そのものだった。「自分の仕事は何の役に立つのか」――震災直後、多くの表現者が抱いた葛藤に応え、大河ドラマとしては異例の月替わりタイトルバック企画が立ち上がる。12組のクリエイターによる連作が、その問いに静かに応えた。

Siren in the Silence

Poetic Documentary

自然はいつも共存を求めてきました。

でも、私たちはその呼びかけに耳を傾けようとしませんでした。

この「おりん」は、日本の伝統的な仏具です。

自然の中でおりんが鳴ります。それは、心をひとつにし、純粋な気持ちになるための合図です。

争いの終わりの合図を鳴らしましょう。

私たちが変わる合図を鳴らしましょう。

おりんが響きます。自然と共に調和するために。

srk - Inspired by Sharaku

Photographic Art

写楽。活動期間たったの10ヶ月にして145点もの絵画を残し忽然と消えた謎の絵師。彼の描いた役者絵はみな、顔や体のパーツが大胆にデフォルメされ、表情やポーズは躍動的に誇張され、まるで今にも動き出そうとしている。 その生命感あふれる作品たちは今も昔も日本のみならず全世界で人々を魅了する。僕もその一人。彼の型破りな世界観からインスピレーションを得て、僕の創作を突き動かし、この 「srk」はうまれた。彼の活動した時代のカルチャーに想いを馳せ、現代に表現する。今回はvolume1から4として4つのスタイルを表現した。

Komyo-ga-tsuji | 功名が辻

Title Art | Opening Sequence of TV Drama | 2006

2006年放映の大河ドラマ『功名が辻』。司馬遼太郎が描いた信義の夫婦譚に寄り添うよう、私たちは安土桃山の美を映像に吹き込んだ。蒔絵や屏風など、実物の美術品を素材として用いるため、幾たびも交渉を重ね、ついに歴史の扉をひらいた。政と情のはざまで揺れる千代と一豊の物語に、静かに煌めく意匠が重なり、古の美はモーショングラフィックスの中で新たな命を得た。歴史と物語と美術が交差する、稀有な創作の場となった。

colors

Media Art | Living Contemporary Motion Graphics | 2010

フェルメールの絵画から色彩情報を抽出し、サウンドクリエイターのヤマダタツヤ氏によるオリジナル音楽を同期させ、有機的かつ抽象的な造形で表現した。色彩構成は欧州とりわけオランダ色が強いがのだが、間(ま)の取り方は日本独特のものを意識して仕上げた。

現在、マサチューセッツ工科大学の色彩とモーショングラフィックスの教材として利用されている。

Ballet

Media Art | Living Contemporary Motion Graphics | 2002

バレエを踊っている時の体内の血流をイメージしている。赤血球、ヘモグロビンが音楽に合わせて血管の中で流れながら弾ける。血小板がリズミカルに呼応する。血液の鼓動にゆられるような感覚。赤と黒のコントラストにより体内の細胞や血が浮かび、楽曲の感情が現れていく。感情の高まりと同期するように血液はまるでそれそのものが生命体であるかのように形を変え、躍動し、そしてまた元の姿へと戻ってゆく。時に静かに、時に熱く、生命の持つ生きた流れを表現している。

Airline

Media Art | Living Contemporary Motion Graphics | 2001

半透明のエレメントが連綿と新たな造形を浮かべる『PRELUDE』に対して、線が風を描く『Airline』。簡素な線が曲がり、重なり、集まることで、色彩はうつろい、大気の流れや雲の造形が現れる。悠々と空を舞う穏やかな流れと楽曲の間。呼応し、そこに在るが、目には見えないもの。BPMが一定ではないクラシック曲に映像をシンクロさせることに実験的要素を取り入れた。これはヴァージンアトランティック航空国際線ファーストクラスのWelcome Imageとして公開された。

Prelude

Media Art | Living Contemporary Motion Graphics | 2000

半透明のエレメントが舞い、重なり合い、連綿と新たな造形を浮かべていく自主制作作品。音楽と共に穏やかに転換していく間(ま)の取り方を繊細に思考して仕上げたモーショングラフィックス作品。一連の幾何学的造形の動きの中には自然と人工物との共存や植物と人間、鉱物の工作、無機と有機といった対比を表現している。駅前の花屋で花を買って家のリビングに飾るように映像のアートを楽しむことを定義として「Living Contemporary Motion Graphics」というコンセプトが込められている。楽曲と映像を同時平行に制作するという実験でもあった。