Xylophone | 森の木琴

Brand Film | 2011

この映像作品が完成したのは、2011年3月10日――まさに東日本大震災の前日でした。翌日、日本は未曾有の災害に見舞われ、日常の風景は一変し、多くの命と静けさが奪われました。そのような混乱の中で公開された本作は、予想を超えて国内外から注目を集め、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでは三部門での受賞という栄誉を受けることとなりました。

本作品が訴えかけたのは、私たちのすぐそばにありながら、静かに疲弊しつつある日本の森の現状です。林業の衰退とともに、かつて人の手が入っていた森は放置され、間伐もされないまま光を失い、深い影を落としています。一見豊かに見えるその森は、実は循環を失い、息苦しさの中で静かに朽ちていこうとしているのです。

そんな森の中に、一本一本手作業で組み上げられた全長44メートルの木琴が姿を現します。使われたのは、間伐された木材。その木琴が奏でるのは、バッハのカンタータ第147番「主よ、人の望みの喜びよ」。斜面を転がる木の球が、一音ずつ丁寧に音を重ねていくその様は、まるで森が自ら語りかけてくるかのようです。朽ちかけた美しさと静謐な再生への祈りが、音と映像に込められています。

YouTubeでは公開から瞬く間に話題となり、再生数は1,000万回を超え、今なお多くの人々に見つめられ続けています。震災という現実と向き合いながら、自然との向き合い方を見つめ直す契機となったこの作品は、世界中で20を超える賞を受賞し、映像表現を超えたひとつのメッセージとして、多くの心に残るものとなりました。

Full Movie

"Xylophone" Behind the scene

試したカタチ24種類、傾斜角度12度、鍵盤の数413、製作期間6ヶ月、ロケーションハンティング64箇所、木琴全長44メートル、撮影のテイク50を記録したドキュメンタリー

Xylophone Creative Team

Creative Director: Morihiro Harano (MORI, ex-Drill)
Art Director: Jun Nishida (Drill)
Copywriter: Noriko Yamada (Drill)
Sound Designer: Kenjiro Matsuo (Invisible Designs Lab)
Director: Seiichi Hishikawa (DRAWING AND MANUAL)
Wood Engineer: Mitsuo Tsuda
Cinematographer: Eitaro Yamamoto (Shadow-dan)
Editor: Hitoshi Kimura (Book), Ryosei Suzuki
Producers: Toshifumi Oiso (Engine PLUS), Hideyuki Chihara (Engine PLUS)
Agency Producer: Ayako Yoshinoya (Dentsu)
Agency: Drill + Dentsu
Client: NTTDocomo
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