Motion Graphics Works and Motion Identity Works

1997年に動くグラフィックデザイン=モーショングラフィックスという定義が世界に先駆けて東京から初めて打ち出された。その年「モーショングラフィックス展」という映像の展覧会が東京で開催され、タイミングよくその渦中に僕はいた。これはアニメーションや映像というよりグラフィックデザインの領域であり、その背景には古代から現代にかけての進化があります。古代エジプトでは、ヒエログリフや絵文字が情報伝達に用いられ、中世ヨーロッパでは、聖書の写本やポスターが手書きで制作されました。ルネサンス期には、印刷技術の発展により木版印刷が登場し、情報伝達が劇的に向上しました。19世紀には、産業革命とともにポスターデザインが発展し、商品広告が盛んになりました。20世紀には、アール・デコやアール・ヌーヴォーなどの様々なデザイン運動が登場し、アイコン的なデザインが生まれました。その後、デジタルデザインが台頭し、DTPとなって現在に至ります。その潮流の中にこの表現があリます。それまで映像という分野に身を置いていた僕はこの新しくて歴史の古いこのムーブメントに飛びつき、今でもその表現を続けています。決して簡単に作れるコストパフォーマンスのいい映像技法などではなく、1ピクセルの違いだけで表現できる奥の深いものです。だからライフワークにするには面白すぎるジャンルなのです。


Motion Graphic Works

Prelude

Media Art | Living Contemporary Motion Graphics | 2000

半透明のエレメントが舞い、重なり合い、連綿と新たな造形を浮かべていく自主制作作品。音楽と共に穏やかに転換していく間(ま)の取り方を繊細に思考して仕上げたモーショングラフィックス作品。一連の幾何学的造形の動きの中には自然と人工物との共存や植物と人間、鉱物の工作、無機と有機といった対比を表現している。駅前の花屋で花を買って家のリビングに飾るように映像のアートを楽しむことを定義として「Living Contemporary Motion Graphics」というコンセプトが込められている。楽曲と映像を同時平行に制作するという実験でもあった。

Concept & Art Director: Seiichi Hishikawa

Animation: Nobuhiro Jogano

Music: Goji Suzuki

Airline

Media Art | Living Contemporary Motion Graphics | 2001

半透明のエレメントが連綿と新たな造形を浮かべる『PRELUDE』に対して、線が風を描く『Airline』。簡素な線が曲がり、重なり、集まることで、色彩はうつろい、大気の流れや雲の造形が現れる。悠々と空を舞う穏やかな流れと楽曲の間。呼応し、そこに在るが、目には見えないもの。BPMが一定ではないクラシック曲に映像をシンクロさせることに実験的要素を取り入れた。これはヴァージンアトランティック航空国際線ファーストクラスのWelcome Imageとして公開された。

Concept & Art Director: Seiichi Hishikawa

Animation: Nobuhiro Jogano

Music: Goji Suzuki

Ballet

Media Art | Living Contemporary Motion Graphics | 2002

バレエを踊っている時の体内の血流をイメージしている。赤血球、ヘモグロビンが音楽に合わせて血管の中で流れながら弾ける。血小板がリズミカルに呼応する。血液の鼓動にゆられるような感覚。赤と黒のコントラストにより体内の細胞や血が浮かび、楽曲の感情が現れていく。感情の高まりと同期するように血液はまるでそれそのものが生命体であるかのように形を変え、躍動し、そしてまた元の姿へと戻ってゆく。時に静かに、時に熱く、生命の持つ生きた流れを表現している。

Concept & Art Director: Seiichi Hishikawa

Animation: Nobuhiro Jogano

Music: Goji Suzuki

colors

Original Art | 2010

フェルメールの絵画から色彩情報を抽出し、サウンドクリエイターのヤマダタツヤ氏によるオリジナル音楽を同期させ、有機的かつ抽象的な造形で表現した。色彩構成は欧州とりわけオランダ色が強いがのだが、間(ま)の取り方は日本独特のものを意識して仕上げた。

現在、マサチューセッツ工科大学の色彩とモーショングラフィックスの教材として利用されている。

Concept & Art Director: Seiichi Hishikawa

Animation: Takaharu Shimizu / Seiichi Hishikawa

Sound Design: Tatsuya Yamada

Electric Dragon 80000V

Feature Film Title-art | 2001

石井聰互監督・脚本のモノクロパンク映画。このエンディングタイトルバック制作に1年を費やした。浅野忠信氏からファックスで送られてきたイラストのアニメーション化。読めなくなるまで動かした文字のモーショングラフィックス。エンディングのクレジットロールとしてつくり始めたこのタイトルバック映像は、今まで見たことがない常識破りな手法を次々に試した。本編のモノクロームの世界観と同調し、一度CGで制作した映像をわざわざ16mmのフィルムに焼いて35mmにブローアップし、テレシネする。8mmビデオカメラで画面を再撮してそれをまたフィルム変換してムービーデータに戻すなど、アナログとデジタルを駆使しきった。

Concept & Art Director: Seiichi Hishikawa

Animation, Edit: Masato Okada / Seiichi Hishikawa

Illustration : Tadanobu Asano

Typography Design : Kenmei Nagaoka

Music: MACH 1.67

HOTWIRED JAPAN

Launch Expression | 1998

米国のITやサイエンス系ニュースを伝えるサイトの草分けとして1997年に開設されたHOTWIREDの日本語版として翌年開設されたHOTWIRED JAPAN。そのローンチの日に突如公開されたLaunch Expression Movie。カルチャー、音楽、ファッション、文学のカオスを表現し、デジタル社会になることへの歓迎と警鐘を同居させる表現をしている。HOTWIRED JAPANは2007年をもってその存在を全うして休刊した。今となっては貴重なジャーナリズムとアートの横断的メディアだったといえる。

Concept, Art Direction, Edit, Music: Seiichi Hishikawa

Motion Identity Works

KADOKAWA | 角川映画

Motion Identity | 2011

角川映画の作品冒頭に掲げられるモーションアイデンティティ。水と大地、空が悠然と呼応し、堂々と羽を広げる鳳凰の姿へと結実する。スタンダードサイズ、ビスタサイズ、シネマスコープ、4K、HD、など全ての映画サイズ用に制作した。

Concept & Art Director: Seiichi Hishikawa

Animation: Tetsuro Tsuji / Seiichi Hishikawa

Sound Design: mergrim

ISSEY MIYAKE

Projection Mapping for Store Front Wall in Tokyo | 1996

1996年、ISSEY MIYAKE青山本店の壁面を利用して「ISSEY MIYAKE」「PLEATS PLEASE」「ISSEY MIYAKE MEN」のロゴをモーショングラフィックスで表現し、建物の壁に映像を投影してのプロジェクション・マッピングをした。この壁面映像はAXIS誌をはじめクリエイティブ系メディアで話題となった。当時、モーショングラフィックスという言葉もプロジェクション・マッピングという言葉はまだ無く、モーショングラフィックスが壁面いっぱいに投影されるというのは画期的なことだった。