Dousuru-Ieyasu | どうする家康

Title Art | Opening Sequence of TV Drama | 2023

安土桃山時代から江戸にかけて(1520-1600)の美術や工芸を参考に創作しました。安土桃山時代には、武士や戦国大名の文化的な競争が激化し、美術や工芸が社会的に重要な役割を果たしました。金工や陶磁器の製作が発展し、茶道具や刀装具などの高品質な工芸品が生まれました。特に茶の湯文化が重要で茶陶や茶碗などの茶道具が洗練されました。絵画では、狩野派や豊臣秀吉の支援により、スクリーンや絵巻物における風景や風俗画が隆盛しました。また、浮世絵が発展し、庶民的な日常生活を描いた作品が多く制作されました。彫刻も重要な美術形式であり、仏教美術においては、仏像や仏具の制作が盛んで、新たな彫刻スタイルが確立されました。武道と芸道が密接に結びつき、武士階級が茶道、華道、能楽、弓道などの芸道に精通し、これらが文化的な重要性を持ちました。これらのことを参考にしながら同じ映像なのにドラマの話が続いていくに従って違うように感じるように抽象表現を用いています。「石のように見えるものは家臣たちかな」「太陽のような丸いものは家康か、または瀬名かな」など、丸や線で構成したアニメーションにどこか人を投影してしまうような想像を導く映像を心がけて創作しています。

Edition #1

Edition #2

Edition #3

Special Edition

日本美術に見られる「雲を線で表す」ような具象を抽象化する表現「丸や四角を観念的に使う」西洋美術寄りの抽象表現。そうした歴史の上にある表現をどう読み込み、成立させるか、検討を重ねた。未熟な家康を「丸」に見立て、「真円」へ成長していくプリミティブな線画や時代考証から紡ぎ出した造形。流れ、間、光。長谷川等伯や尾形光琳、葛飾北斎のような絵師たちが、もし現代に生きていたらどんなアニメーションを作っていただろうという想像から、偉大な絵師たちを憑依させるような気持ちで描いたベーススケッチ。舞台となる安土桃山時代からの物語に合わせてシンプルなものに仕上げている。

第十三話から第二十五話にかけて描かれる「三方ヶ原の戦い」に合わせて、タイトルバックもより重厚な印象へと移り変わっていく。幾何学的な構成と墨のにじみのような濃淡が重なり、戦国の緊張感と混迷を視覚的に表現。黒と深紅の画面には、敗北や不安、そして家康の内なる動揺が滲み出るよう。金箔のような光が画面に差し込みはじめる。これは、家康が敗戦を越え、未来を見据えようとする覚悟の象徴。抽象化された兜や葉の文様が浮かび上がり、武士の美意識や時間の積層を暗示する。イチョウの葉は散りゆく命であると同時に、再生の兆しでもある。物語は中盤に入り、タイトルバック映像は単なる装飾ではなく、人物の内面や時代の空気を映し出す語り部としての役割を担い始めている。

初期は浅い色彩と抽象表現で表現し、中期はそこへ黒や赤、金といった人間の欲のようなものを取り入れました。そして今回の三つ目は抽象から具象へ、つまり夢や思想が形になっていくことを表現しました。家臣などの仲間の絆、そして畝る波のような時代の変遷の先に民や町が見えてくる。それら全てをじっと見ている富士の山。その後200年以上も戦のない太平が続くのを歓迎するように桜が舞う。タイトルバックというものはドラマ本編の入り口の語り部として、まるで窓の外に広がる庭のような部分だと思いながら制作した。

関ヶ原の戦いを経て、徳川幕府誕生へ。その誕生を祝うかのようにオーケストラ編成のテーマ曲としてそれまでオープニングを飾っていたものを第44話のためだけに4台のピアノを使用して表現した稲本響さんの特別曲が用意されました。ピアノ曲に合わせて、まるで円相を描くように一筆の表現に取り組みました。葛藤を乗り越えながら太平の世を目指した家康の胸中を、幾重の山が静かに代弁するようにタイトルバックとして表現できたらと。数々の別れや、出会い、裏切りと忠誠の中から戦のない未来を見続けた家康の生き様。新たな春を迎えて舞う桜。見守る富士の山を簡潔に表現をし、余白から滲む物語に添えた。

Dousuru-Ieyasu Titleback Creative Team


Art Director: Seiichi Hishikawa
Animator: Marina Takahashi+Seiichi Hishikawa+Ayaka Takamatsu
Music: Hibiki Inamoto + NHK Symphony Orchestra
Production: DRAWING AND MANUAL