Siren in the Silence
Poetic Documentary | Original Film-Art
北海道・白老で開かれた「ルーツ&アーツ しらおい」で発表されたこの映像アート作品は、「ポエティック・ドキュメンタリー」という新しいかたちの表現で生まれました。深い森や澄んだ空気に包まれた白老の自然の中で、おりんの澄んだ音がそっと響きます。その音は、私たちが気づかぬうちに自然にしてしまっている過ちへの、静かな問いかけのようです。
おりんは、もともとお寺で祈りの合図に使われてきた仏具です。「合図」という言葉は、「相指図(あいさしず)」という言葉から生まれたもので、人と人があらかじめ気持ちや行動を通じ合わせるという意味を持っています。旗を振ったり、手を叩いたり、目と目で合図したり。そんなふうに、合図は人と人との心の橋渡しでもあります。
そして「おりん」という名前にはもうひとつ、こんな由来もあります。お釈迦さまが亡くなられたとき、悲しみの中で鳴いた鳥「リン」の声にちなんで、その音に似せて作られたとも言われています。だからこそ、おりんの音はどこか懐かしく、心に深く染みわたるのかもしれません。
この作品で鳴らされるおりんは、白老の自然とともに、私たちにそっと語りかけます。「いま一度、自然と共に生きるという約束を思い出してみませんか」と。水や森や動物たちと手を取り合って生きていく、そのきっかけになるような優しい合図として、おりんの音が響いています。