Commercial
映画、CM、MVと様々なジャンルの映像がありますが、それぞれにやり方を変えてはいません。むしろ器用ではないので変えられないというのが本当のところ。強いて姿勢を問われればスケジュールさへ合えばどんなものでもつくりたいと思っています。創作者は創作の機会が最も大切です。つくることが存在意義ですから。クライアントからの依頼でつくるものは自分に無かった出発点と、到達点もまたそれまで考えもしなかったところに行き着くのが楽しい。演出、脚本、撮影、VFXそれぞれのパートを自分でもやってみたいという好奇心で続けてきました。規模によってはそれらを仲間に任せて自身は一つの役割に徹します。けれど、後で見返して代表作として残したいと思えるものは規模の小さな、数人で手がけたものが多い。意思疎通があって、何度も話し合って、どうにか完成させたもの。作品はつくづく人間がつくるものなんだなあと思います。

Clouds above the Hill | 坂の上の雲
TV Drama Title | 2009
司馬遼太郎原作のこの作品を映像化する。そのことだけで何ヶ月も悩んだ。作品としてあまりにも著名で、壮大で、名作だからだ。2006年から考え始めたタイトルバックを、オンエアが始まった2009年まで3年間考え続け、そしてオンエアが終わる2011年までのまる5年関わった。タイトルバックで最終的に決断したのは「山」。そびえる山を登る。その道筋を主観映像で見せるというものだ。一時の話題性でこの映像を描いてはならない。10年後、20年後、それ以降もこの作品に恥じないエンディングを飾るものでなくてはならない。久石譲氏のテーマ曲とともにスケール感のある作品になったと思う。

Guardian of the Spirit (Moribito) | 精霊の守り人
TV Drama Title | 2016
上橋菜穂子氏原作によるファンタジー小説のドラマ化にあたり、そのタイトルバックを手がけた。ベースとなる背景をアイスランドにて空撮、ハイスピード撮影などを駆使して撮影。タイトルバックオリジナルのキャストの撮影を東京のスタジオで行い、3DCGなどを織り交ぜてファンタジー世界のイントロダクションにふさわしい映像美を心がけた。佐藤直樹氏作曲、NHK交響楽団によるテーマ曲もそのスケール感の表現に欠かせないものとなった。ドラマは2016年から3年に渡り放映される。ファンタジーの世界観というものが空想のものであり、その創作の独創性が試される貴重な機会になった。

Sony “BOLD TYPOLOGIES”
Brand Film Documentary | 2017
ソニーがそのDNAとして創業当時から大切にしているものとは。それはまぎれもなくデザインだ。そのソニーデザインの理念であり理想を”BOLD TYPOLOGIES”というひとつのキーワードで切り取った映像。ソニーのデザイナーはもとより、アーティストや学生といったソニーユーザーの声を軸にこれに呼応するかたちでソニーのデザインを羅列する。いいデザインとは何かということを大衆に問いかけ、そしてソニーのスタッフにも問いかけた。これはドキュメンタリーでもなく、プロモーションでもない。映像化された問いかけである。

“The Way Of Sake” Fukumitsuya | 福光屋 酒蔵物語
Branded Film | 2018
福光屋は1625年(寛永2年)創業。金沢で最も長い歴史と伝統をもつ酒蔵。良質な酒米と仕込み水に恵まれ、金沢の気候風土と感性によって育まれた酒造りの伝統技術を進化させ、2001年に米と水だけで酒を造る純米蔵を実現した。未来にむけて日本酒の真の姿を追求し、日々新たな伝統を創造している。その酒蔵を映像に残した。前作はかの黒沢明監督率いる黒澤組のチームが制作、20年の月日を経て現代の福光屋の姿を残す新作として1年半の制作期間を費やし映像が完成した。
こちらの映像は福光屋の酒蔵に併設されたショールームでのみ観賞可能です。

Short Movie "FOUR" by Mercedes-Benz
Branded Film | 2014
"メルセデス"とはもともと女性の名前から由来している。エレガントな女性の振る舞いや会話を4つのショートムービーで表現した。どうしても自分の考えていることに近づけたくて結局、監督、脚本、撮影、編集を自分でやることになった。ここで持ち出したのはポエムという叙情的で深い表現。従来のプロモーション映像ではこういう表現はしない。日本的な情緒とグローバルなセンスの絶妙なバランスに気を配った。

Sony “Water Rock”
Branded Web Movie, TVAD | 2013
純度の高い天然水で知られる九州・熊本の水源地帯。その水源地帯周辺には世界中のシェアを誇るイメージセンサー工場が集まっている。ソニーのイメージセンサー工場はその代表的な存在。センサーの生産には純度の高い水が欠かせない。ソニーでは生産に使われた水を濾過し、元の純度に近い水で周辺の田畑へと再利用している。自然との共生をテーマに水の音だけでパッヘルベルのカノンの名曲を奏でることで表現した。用意えした水の総カット数は1500カット。映像からマイナスイオンが溢れるような作品になった。

Tokyo Station | 東京駅復原
TVAD | 2013
100年前に建設された東京を代表する駅-東京駅が修復復原を経て元の姿を再生するのを記念して制作されたTVAD。悩んだ末にマーラーを選曲して、交響楽団の録音し、荘厳で美しい映像作品を目指した。ナレーションはイッセー尾形氏に依頼。歴史を振り返る"歴史篇"と蘇った駅舎を魅せる"復原篇"の2つを監督。その歴史に敬意を払い、オーソドックスで真っ直ぐなディレクションを目指した。

POLA B.A
TVAD | 2017
POLA B.AのTVCMを東信さんのフラワーアートによって人の人生観を表現しました。計13台のカメラで10日間のタイムラプス撮影を敢行。“華々しい開花だけでなく、役目を終えて朽ちていくところも含めて、花が人生を演じているような、まるで人間に見えてくるような絵を撮って欲しい”というCreative Directorの原野氏の掲げたテーマを花の開花と枯れて行く様のありのままを撮影し、映画音楽でまとめました。美しさとは何か、という大きなテーマに30秒の映像で挑んだ。

POLA B.A
TVAD | 2017
POLA B.AのTVCMを演出企画するにあたり、選んだ場所がアイスランド。その原始の風景の持つ生命の強さやしなやかさが必要だった。可能な限り削ぎ落とした演出を心掛け、米倉涼子氏、夏木マリ氏の生き方が滲み出るような佇まいと共に表現をした。音楽はサウンドデザイナーの清川進也氏を中心にミュージシャンたちによるインプロヴィゼーションの音楽を映像にのせた。地球の持つ静かな力が表現できたのでないだろうか。