Short Movie "FOUR" by Mercedes-Benz

Branded Film | 2014

"メルセデス"とはもともと女性の名前から由来している。エレガントな女性の振る舞いや会話を4つのショートムービーで表現した。どうしても自分の考えていることに近づけたくて結局、監督、脚本、撮影、編集を自分でやることになった。ここで持ち出したのはポエムという叙情的で深い表現。従来のプロモーション映像ではこういう表現はしない。日本的な情緒とグローバルなセンスの絶妙なバランスに気を配った。

Vol.1 土曜日

玄関から颯爽とでてくる女。片手にはハイヒールを持っている。
天気を確かめるように見上げたあと、クルマに乗り込む。
感じのいいセレクトショップの正面にクルマを止める。

「ゴメンね。待ったでしょ。ランチをおごるから許してね。」

ルームミラーでほんの少し化粧を確認しながら、クルマを降りる。
 後ろ向きに話しながら店の入り口へ歩く。

「前にも来たことがあったよね。え?(笑) 違う男のひとじゃないわ。そうだとしたらヤキモチ焼くの?」

雑貨店の入り口にある花を眺めて、気に入った数本を躊躇もなく手に取ってゆく。

「いいことがありそうな時は花を買うの。」

「ううん、あってからじゃダメ。予感がしたときに買いに行くのよ」

 花束を持ったまま、店内を歩き回る。洋服を合わせてみたり、アクセサリーを合わせたり。

「今日は、予感がするの(笑)」

「フフフ、そうね。する時もあるし、しない時もあるわ」  

「先週は予感がしなかったの。(笑)」

「そしてね、その予感はかならず当たるの」 

会計を済ませるとくるっと向きを変えて出口へと向かう。振り向いて微笑む。

「どこへ行こうか? このままわたしが連れてってあげるわ」

Vol.2 生物学

運転していた女がスピードを落とし始める。おもむろにスイッチを操作し、走りながらオープンにする。どうしてここを曲がったのかと聞いても、女は答えないだろう。 直感で曲がった道の先にある、忘れそうだった解放を求めていたのだろうか。 

「こんなところに住みたいわね」 

家を買ったらいくらかかるか、すっかりオトナになった頭に数字が並ぶ。 

「宝くじが当たったら何がしたい?」

「フフ。子供みたいね。」

女はゆっくりと風景を眺める。両手を大きく伸ばし、伸びをする。
ひと呼吸をおいて、こっちを見る。

「仕事を離れて、海外の大学へいきたいわ。」

クルマを降りて、ドアを空けたまま、走り出す女。離れたところから照れながら話す。

「生物学。。」

「どうして? そんなに意外?」

  原っぱの真ん中にちょこんと座って遠くの山をじいっと眺めている。

「本当は生物学者になりたかったの。」

「どうしてひとはひとを好きになるのか。ね? いい研究テーマでしょ?」

「あなたを被験者として雇ってあげてもいいわよ。」

女はちらりと目を合わせたあと、また遠くの山を見ている。

Vol.3 夕焼け

ソファに座ってコーヒーを飲みながら植物図鑑を眺める女。

「本棚があるお店って好きよ。知識欲が刺激されると食欲も湧くと思うわ。」

湖面に落ちてゆく夕日。窓際の席に移り、ほおづえをつく。

「どうして夕日は切なくなるのかしらね。」

「私だって、夕方にはセンチメンタルなことだって言うのよ。」

ウェイターがワインを勧めてきたが丁重に断る。振り向いて、ワインが飲めないことにちょっと怒っている風なそぶりを見せる。

「大事な話があるって言ってなかった?お酒を飲む前に話して。」

夕焼けが会話を途切らせる。二人とも窓の外に見とれてしまう。

「別なことを考えているでしょ。エッチね。」

「ねえ、ドライブしない?」

夜の高速道路を走る。街灯が次々に後方へと流れてゆく。

「いいわよ。泊まっても。素敵な場所に連れてってね。」 

「次のサービスエリアで交代ね。今度はあなたがリードする番よ。」

「明日の朝、もう一度聞くわ。この時間に浸りたいから。」

Vol.4 やさしい音

湖畔にクルマを止めて、朝日に光るボディに寄りかかる女。耳に手をあてがい、目を閉じて音を聴いている。

「静かね。」

「朝の音が好き。やさしい音。」

ゆっくりと水際まで歩き出す。

「女はね、音に惚れるのよ。」

ちいさな石ころを湖面に投げる。ほちょんと小さな音がする。ゆっくりと波紋が広がる。女は波紋を見ている。

「あなたの声に惚れたのよ。」

そう言うと逆光の陰で微笑む。

「そうよ。声だけよ。(笑)」

靴を片方だけ脱いで湖面にほんの少し足先をつける。冷たいという顔をして振り向く。

「声を褒めたらとたんに話はじめるのね。」

「朝のおしゃべりは野暮よ。」

口に指をたててしいーっという仕草。

「じっと耳を澄ますの。あなたにできるかしら(笑)」

ふと、静寂がふたりを包む。

「ねえ。」

「いつもありがと。」 

“FOUR” Production Team

Director / Screenplay / D.O.P / Edit : Seiichi Hishikawa

Executive Producer : Hisao Tsudome
Producer : Keiko Iino / Assistant Producers : Mizue Kawamura , Ai Natori
Actress : Mia Tazawa
Stylist : Kayo Hosomi / Assistant Stylist : Natsuki Kozawa
Hair & Make Up : Rie Aoki / Assistant Hair & Make Up : Junko Yamazaki
Assistant Directors / 2nd Camera : Yutaka Obara , Kyohei Fujita
Auto Technicians : Hideyuki Kawashima , Keiichi Okano
Drivers : Ryuji Kurobane , Masashi Ishida
Casting : Rieko Kuze , Satomi Yoshikawa
Online Editor : Satoshi Igarashi / Assistant Editor : Atsushi Yamazumi
Sound Engineer : Shinichi Mizuno / Assistant Sound Engineer : Taishi Konomura
Editing Studio Coordinators : Masaya Yamada , Kento Uranishi
Original Soundtrack : Maki Mannami
Voice Actress : Hitomi Ando
Website Design : Tetsuro Tsuji , Tomoya Kamiko
Logo Design : Yusuke Kobayashi